2017年1月26日木曜日

人間と機械のあいだ

池上高志+石黒浩 「人間と機械のあいだ 心はどこにあるのか」講談社 2016

僕は、命は永遠ではないから、人は限りある人生を有意義なものにしようと生きるものだと考えていた。その考えは今でも変わっていないけど、そのうち人間の脳が無機物にアップロードでき、永遠に生きられるようになると、僕(の考え)はどうなるのかなと興味深く思う。

アンドロイドが側にいることが日常的になった時、社会は、宗教は、人間の生活はどの様に変化していくのか。SFではない現実の社会がそう遠くないことを予感させられます。人間が作り出していたはずの変化が、いつも間にか変化によって人間が作られている。実はもう既にそんな社会を生きているのだなと感じます。

2017年1月25日水曜日

中東崩壊

日本経済新聞社編「中東崩壊」日経プレミアシリーズ 2016

池上彰さんのイスラム解説本の後に読んだので、内容が頭に入りやすかった。中東を構成する諸国間の関係と欧米との関係を歴史的に振り返り分かりやすくまとめている。

中東問題が日本のメディアで大きく取り上げられる事は稀だが、中東発の世界大戦に巻き込まれるリスクと言うのは現実的な問題だと認識する。地理的に遠さと関心の低さの反比例は仕方ないことなのかも知れないが、それでもやはり日本メディアは脆弱なのだろう。

誤解を招く言い方ではあるが、日本の改憲に関する議論が盛り上がらないのは、日本人が世界の状況を知らず(知らされず)平和ボケしているからなのだと思う。リスクを検討することと恐怖心を煽ることは違う。現状を知り、リスクを考える。その材料として手に取りやすい一冊だと思う。

2017年1月24日火曜日

池上彰のニュース そうだったのか‼︎


池上彰さんによる中東事情の解説本。大きな字と図と写真で無駄なく解説していてものすごく分かりやすい。複雑化してついて行けなかった中東情勢の基本を抑えるにはこれ以上ない一冊だと思います。

本書の内容とは別に、わかりやすく説明するにはどのようにしたらよいか、という点でもとても参考になる本だと思います。疑問に先回りして答えるのは難しい。だからこそ入念な準備が必要。やはりこれがプレゼンの基本なのかと再認識します。

2017年1月23日月曜日

太陽のパスタ、豆のスープ


相方が宮下奈都さんにハマったらしく、片っ端から借りてきて読んでいる。本書も面白いからと薦められて読んだが確かに面白い。肩の力が抜けるというか、気持ちが軽くなる脱力系の小説だった。

宮下さんと言えば直木賞候補作で本屋大賞受賞の「鋼と羊の森」が印象深いが、素の本人はきっと本作のような、どこか抜けた感じの明るくほんわかとした人なんじゃないかと思う。美味しいものを食べたら嫌なこと全部忘れて元気になっちゃうような。

結婚を考えて、自分の仕事にちょっと本気になれなかった女性が主人公。婚約破棄されて、何だかよく分からなくなったことをきっかけに、自分のことや周りのことに少しずつ気付き始めていく。どこまでも普通で、それが愛おしく感じる物語でした。

chara@昭和女子大


Chara@昭和女子大学。珍しい会場。中野サンプラザみたいなホールだった。オールタイムベストと銘打ったライブで、懐かしい曲や代表曲を満遍なく投下したセットリストだった。

もう何度Charaのライブに行ったのか分からない。というくらい何度もそして昔から観ているのだけど、Charaの見た感じの変わらなさには驚かされる。デビュー25周年。長女はもう21歳(MCで一緒にカラオケ行った話は羨ましかった)。つまりそれくらいの年齢なのにCharaはいつまでもCharaだ。

去年あたりから、ファミリー向けのチケットプランを用意したせいか、小学生くらいの子供を連れた親子参加もちらほら見かけた。Charaのライブは愛に溢れているから、カップルや親子で観るのは幸せが倍増してとっても良いと思う。僕はいつも一人だけど。涙

ライブの方は、序盤は音が会場に馴染んでいない様な感じがしたが、中盤のタイムマシーン以降は音の響きがグッと良くなり、それにつられて会場の雰囲気もどんどん良くなっていった。大切をきずくものはミスって演り直したけど、それも含めて盛り上がったのは会場に一体感があったからだと思う。

きっとCharaは100歳になってもCharaで、相変わらずガーリーでキュートなおねえさんなんだと思う。女性に根強い人気があるのがよく分かる。Charaほどナチュラルに愛を歌えるアーティストはいないんじゃないだろうか。

2017年1月22日日曜日

アンドロイドは人間になれるか

石黒浩「アンドロイドは人間になれるか」文春新書 2015

当ブログではお馴染みの石黒先生のアンドロイド本です。過去に出版された本と重複する内容は多いものの、改めて先生の研究の面白さに思考が刺激されます。(念のため書きますが、僕は理系音痴です。それでも((きちんと理解できているかは別として))何の苦もなく読み進められます)

人とは何か。心とは何か。他人の気持ちとは何か。アンドロイドを通じてそれらのことを考え続ける。アンドロイドが登場するどんなSF作品より、身近でリアルに感じるのは、自分の中にある分からない問いに向き合うことになるからだと思います。考えるという行為の、どうしようもないくらいの苦しさや楽しさによって、僕は自分の確かさを実感しているのかも知れません。

一つ気になったことは、アンドロイドが高度化することに伴い、作る側と使う側の「差」がこれまで以上に広がるということです。それは主に技術的な難易度に依拠する文脈で語られているのですが、核兵器とは違い、アンドロイドはスマホのように社会的な存在となることが予想される中で、この「差」の拡大がどのような影響に繋がるのか。不可避な変化だけに怖さも感じます。

2017年1月17日火曜日

引き出しの中の家


今日の一冊。朽木祥さんの「引き出しの中の家」。僕はハリー・ポッターの様な魔法物語も好きだけど、読後に世界が違って見える魔法の様な物語も好き。

ちいさな女の子と、小人の少女の秘密の交流を描いた物語。ジブリアニメ「借りぐらしのアリエッティ」を思い出す。でも、お菓子作りやドールハウスなどのアイテムがいっぱいなので、女の子の方がワクワクする物語かも知れない。

優しく陽だまりのような暖かい文章で、僕は娘にこういう本を贈りたい。それと懐かしさが込み上げてくる本の装丁も素敵です。


2017年1月14日土曜日

よろこびの歌


宮下奈都さんの小説。バトンリレー形式で紡ぐ、女子高校生たちの青春物語です。リズム感のある文章で読みやすく、物語が進むごとにじわりと胸が暖まって来ました。

「誰かのどこかに揺すぶられるものがある」

僕が物語を読むのは、僕の中に「揺すぶられるもの」が残っているのか、それを確認するためなのかも知れない。

読んで感動してばかみたいに泣いて。自分でもどうかしていると思うのですが、どうしても涙が溢れてしまうのです。でもそれが僕の「揺すぶられるもの」なんだと思うと何だか安心できました。


2017年1月13日金曜日

難民問題

墓田桂「難民問題」中公新書 2016

先日読んだ「シリア難民」より、論点を包括的にかつ慎重な姿勢で分析していて、難民問題の全体像が掴め、とても参考となる内容だった。

日本は難民受け入れに消極的なのは事実だが、実際の難民申請者の大半が経済的な移民希望者であり、その結果認定者数が少ないなど、大手メディアでは報道されないデータも多い。また、受け入れ難民の国籍が、政治的なリスクを内包することも現実的で説得力を感じた。

一番考えさせられたのは、難民受け入れを、誰もが反対できないような人道的観点からのみ検討することのリスクについて。それは「善意の上限」というキーワードであり、善意だけではこの問題は解決しないし、逆に現在EUが直面しているような危機を招く可能性を適切に懸念している。

勿論、だからと言って突き放した政策をとることが正しい回答ともせず、それぞれの立場が一理あるというジレンマに向き合っている。

難民問題はまだまだ先が見えない。日本がEUのような劇的な変化の当事者となる可能性も当然ある。その前に、論点を整理し備える必要があると感じた。

2017年1月9日月曜日

シリア難民


今世紀最悪と言われるシリア内戦について何が起こっているのか知りたくて手に取った一冊。でもこの本の原題は「The New Odyssey The Story of Europian's Refugee Crisis」。ちょっと意訳し過ぎじゃない?

1月7日の東京新聞で、シリア難民問題を追ったジャーナリストの死亡者数が昨年で150名以上となったと知った。日本ではほとんど報道されない問題だけど、世界的には正に命懸けの報道がされている大問題なのだと思った。

本書は、一人のシリア人男性への同行取材を軸に内容構成されているが、基本的には他の中東諸国やアフリカを含め、ヨーロッパを目指す難民たちについて取材している。だからこそ問題の複雑さと根深さを感じる内容になっている。

ヨーロッパをはじめとする受け入れ国がたとえ拒否しても難民は減らない。ならば受け入れ制度を整え、管理入国を徹底することの方が、テロの可能性を摘むことにつながる。というスタンスで受け入れ国側の寛容政策と人道支援の必要性も訴えている。

僕もそう思うのだが、実際に日本に数十万人の難民がやって来ることを想像すると、当たり前だけど慎重に考えざるを得ない。イスラム過激派にとって日本は敵なのだから、難民に紛れてのテロリスト入国を心配する。

一人で考えても煮詰まるし、そもそも情報が少ないので、当面は関連する書籍を読んで、歴史的背景や何がアクチュアルで起こっているのか、それらを知ることに努めたいと思います。

2017年1月8日日曜日

史上最強のリーダー シャクルトン


新年4冊目。1910〜20年代に活躍した探検家シャクルトンのリーダシップについて分析をした一冊です。世界的に超有名人らしいのですが、私は今年まで知りませんでした。。

本書は冒険譚ではなく、あくまで彼の実績からリーダシップについてのエッセンスを抽出した内容構成になっています。企業経営者向けに書かれたマネジメント本のような感じです。

前半部分は主に人事のあり方、そして後半部分はリーダーとしてのあり方や危機管理についてとても分かりやすくまとまっていると思いました。

僕なりに為になったのは、人事面のところで「本気で仕事を欲しがる人を採用する」ということ。逆に言うと仕事を得ようとするなら、何が何でもその仕事に就きたいという熱意を示すこと。これまでで一番足りてなかったなと思いました。

僕はこの本のように歴史上の人物に再び光を当てて、そこから学ぶべき点を学ぶというあり方はとても好きです。何となく謙虚になれます。そして物語性があって読み物としても面白い。少なくとも巷に溢れる啓発本よりは。そう思います。

2017年1月6日金曜日

スーパーソニック


新年最初のエントリです。今年もよろしくお願いいたします!

娘が産まれて最初のお正月は、実家に帰ることもなく、のんびりと過ごしました。娘はだいぶ大きくなってきて、成長の早さを実感します。

今年最初の映画は、オアシスのドキュメンタリー映画「スーパーソニック」です。僕はオアシスの大ファンで、未だに05年のサマソニがこれまで観た中でベストライブだと思っています。思い入れが強いので、偏った評価になってしまいますが、新年最初に相応しい、見応えのある映画でした。

内容はオアシスが頂点を極めたと言われる、デビューからネブワースでの25万人動員ライブまでの軌跡を追ったもので、若かりし頃のギャラガー兄弟のお宝映像&逸話が満載で、よく残っていたなぁと感慨深いものがありました。

映画を観て、オアシスとは改めてロックンロールの成功物語であり、若者の夢と憧れの結晶のような存在なのだなと思いました。そして、その音を聴き返してみて、ノエルの美しいメロディーと、野性のカッコよさを感じるリアムの声に再び痺れています。