2009年9月18日金曜日

報告書①

協力隊員は定期的に活動報告書の提出が義務付けられています。この報告書は日本国民ならどなたでも閲覧が可能となっています。国民の税金によって派遣されている協力隊員。これもODAの一つです。ざっと見積もって1年間に1500人以上派遣されている隊員すべての報告書に目を通すことは難しいですが、関心のある人は読んでみるべきだと思います。

以下、私の第1号活動報告書です。あらかじめ指定されたテーマについての報告となります。


【活動地域及び配属先の概要】
ウランバートル市は全人口250万人の約4割近く、100万人以上を抱えるモンゴル最大の都市である。近年、急速な開発による都市化と、地方からの移住による人口増加が起こっている。また経済成長により市民の消費活動が活性化され、それに合わせて廃棄されるごみの量が増加し、廃棄物の問題が深刻化している。現在、この廃棄物の問題は2009年1月に新たに創設された、市長事務局環境汚染・廃棄物管理部(EPWMD)が中心となって管理している。スタッフは7名。部長以下、大気汚染担当、水・土壌汚染担当、ゴミ箱・公衆トイレ担当、廃棄物基金担当、収集運搬担当、処分場担当とそれぞれが一つの分野を任されている。同部署へのJICA援助受け入れ実績はまだ無いが、前身である都市整備公共施設課との間で、2005年から3年間、ODAの一環としてウランバートル市の廃棄物管理マスタープランを作成する開発調査が実施された。また、2007年に無償資金協力による最終処分場の建設と収集運搬車両が供与されたほか、2005~8年には廃棄物管理のSVと環境教育のJOCVが派遣されるなど、我が国の援助との関係は深い。

【ボランティアが所属する部局の概要】
ウランバートル市の廃棄物行政は、異なる3つの組織によって運営されている。市内の清掃、収集運搬、処分場運営といった実務を担当する都市整備公共施設課、廃棄物収集料金の徴収を行うWSF、そしてボランティアが配属するEPWMDである。またこの他に2008年4月に完全民営化された清掃、収集運搬、料金徴収を行う旧公営団体であるTUKが実務部隊として収集運搬の7割程を請け負っている。EPWMDの主な事業は都市整備公共施設課、WSF、TUKといったそれぞれの事業が重なり合う組織間の調整を行うことであり、廃棄物収集運搬事業の全般のマネジメントを担っている。現在EPWMDでは7名のスタッフが勤務している。部を統括するデルゲド・バヤル氏は、都市整備公共施設課でのキャリアがあり、またJICA支援による日本での2ヶ月間の廃棄物処理技術研修を受けているなど、この分野での造詣が深い。他のスタッフでは、現在1名が日本での廃棄物処理技術研修に参加している。平均年齢が30台前半と比較的若い部署であり、今後専門分野に特化した人材が育つことが期待されている。

【配属先のニーズ】
ウランバートル市は2007年にJICAの協力により2020年を目処とした廃棄物管理マスタープランを作成した。マスタープランで示された基本目標は『計画目標年である2020年までに、ウランバートル市に環境と調和する廃棄物管理システムを確立する』ことである。目標を達成するために、ハード面では中間処理施設の設置や収集運搬車両の拡充、ソフト面ではそれらを管理運営する人材育成が必要とされている。また家庭ごみの分別収集を導入や、市内に散乱するごみのポイ捨て状況を改善するために、市民のごみ問題対する意識向上も重要な課題としてあがっている。ボランティアへのニーズは、市民に対するごみ問題の啓発活動の実施であり、草の根レベルでの活動が期待されている。中でも将来を担う若い世代への教育が最も期待されている。

【活動計画準備状況】
現在、活動の準備段階として、ウランバートル市のごみ問題の現状を把握することを最も重要な課題として認識している。ウランバートル市の廃棄物管理マスタープランを精読することで、廃棄物の質や量といった基本的な情報を把握している。また市内を巡回することで、公共ゴミ箱の利用状況やポイ捨てごみの散乱状況など、文献からでは分からない情報収集にも努めている。その他、市内にある環境NGOを訪問し、情報と今後の活動に備えてのネットワーク作りにも力を注いでいる。本来これらの活動は配属先との協議のうえ進めるものであるが、配属先カウンターパートが多忙であることから必要なコミュニケーションが取れていない状況である。そのため、今後の具体的な計画作りにあたりカウンターパートとの情報の共有を進める必要がある。

【受入国の印象】
ウランバートルは、急激な都市化による悪影響の面が、最も顕著になって現れている都市だと感じる。日々いたる所でみられる交通渋滞と、それよって引き起こされる深刻な大気汚染。経済の自由化以降、極端に広がる格差も我が国以上にはっきりと見て感じ取れる。また人々の生活様式も西洋的で、ほとんど違和感なく生活に溶け込むことができる。しかし、これはウランバートルの一面であってモンゴル全体ではない。ウランバートルから車で2時間の郊外へ出ると、果てしなく広がる草原、ぽつんぽつんと建つ伝統的家屋のゲル、そこらを駆ける馬や家畜たちといったイメージ通りのモンゴルに出合うことができる。ゲルで生活する遊牧民の生活は完全に自然と調和していて感銘を受ける。太陽熱、風、雨水や家畜の糞などを燃料として使い、一切の無駄を出さない循環システム持っている。そして遊牧民の生活もとても質素で贅沢が感じられない。このように一国の中に全く異なる生活様式が共存していることに最も驚きを感じる。

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