ラベル 今日の1冊 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 今日の1冊 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2022年7月2日土曜日

無月の譜

僕は将棋ファンなので、将棋関連の小説を見つけると必ず読んでいる。この「無月の譜」はたまたま見つけた小説だったのだけど、これまで読んだ将棋関連小説の中で、異色の面白さを味わうことができた。

奨励会を年齢制限で三段で退会した主人公が、駒師である大叔父が作ったとされる幻の駒を探し求め、海外にまで旅に出るというストーリー。その過程の中で、大叔父に関連する人物たちとの出会いを通じ、それぞれの人生に触れながら、主人公自身が奨励会退会の挫折から癒され、成長していく物語。

将棋というゲームや棋士の魅力から話を深めていく小説も面白いが、本作では将棋の駒から将棋の魅力、そして将棋というゲームに惹かれる人の様子が描かれている。そしてそれだけでなく、やや道徳的ともいえる観点から、老いること、生きること、成長すること、挑戦すること、など人生訓とも読み取れるような話が展開されているのも、物語に重厚感を与えていた。

読み手がどんな状態であるのかによって、感想が大きく左右されそうな作品かも知れない。僕の場合は、子育てや人生に悩んでいるときに出会ったので、これまでを振り返り、そこに意味を与え、そして前に進みたいとと考えるようになった。

 

2022年6月24日金曜日

嫌われる勇気

今日の一冊「嫌われる勇気」。出版された当初から知っていた本なのに、不思議と読んでいなかった。最近パートナーから勧められて読んでみた。読み始めてすぐの一章から目から鱗が落ちる内容で、引き込まれるように読了した。本の内容を咀嚼して、理解できるようになるには、もう数回繰り返し読む必要はありそう。だけど「仕事」や「人生」について悩みを抱えている人にとっては、とても有意義で、場合によってはその人の一生を変えるくらいの力がある本なのではないかと思う。僕にとっても、仕事に臨む心構えや、子育てへの向き合い方に関して参考になる内容だった。いや、参考になる以上に、書かれていることを理解して、実践してみたい気持ちになった。一点だけ気になったのは、アドラー心理学では子どもを「褒める」行為を是としていない点。それは「褒める」行為は、上下関係が基本であり、その背後には相手をコントロールする意図があるからだという。子育て関連の書籍では「褒める」ことが当たり前のように良いこととして書かれていることが多い。だから、どうなのだろう?という疑問を、もっと色々な人たちと共有して話をしてみたいと思った。

2020年2月14日金曜日

「AIに負けない子どもを育てる」

帯に待望の続編とあるが、個人的に本当に待望していた続編。タイトルに~子どもを育てる~とあるように、小さい子を持つ親にとっても、これからの子育てを考えるうえで、広範にわたって参考となる内容だった。すでにかなり売れている本ではあるけど、一人でも多くの人に手に取ってもらいたいと思う。

僕が最後に得た感想は、新井さんの社会問題に対する意識が高いということ。「読解力」をキーストーンとして、個人の自己実現と社会インフラの拡充を論理的に分かりやすく提示、実行している。「読解力」が高い人は多数いても、それを本書でも指摘しているような「ノブレス・オブリージュ」として認識している人が果たしてどれだけいるか。

そういう人材が育つために必要な条件は何だろうと思う。僕なんかは社会貢献意欲は強い方だが、肝心の能力の点で、その意欲を成果ある形にすることができていないと実感する。それは歯がゆいし、情けない思いもするし、かといって自己否定に浸っていてはそれこそまずいという危機感しか感じない。

だからこそ、本書を読んで、そこで指摘されている点を、能力面に対する改善案として受け止めて「読解力」を向上させるように努めたいと思う。同時に「読解力」は、ビジネスや日常生活に密接する「スキル」であるので、外に向けて行動するようにありたいと思う。

2020年2月10日月曜日

竜馬がゆく


竜馬がゆくを読んだ。と言っても再読。初めて読んだのは確か高校生の時。本は読んだ時の環境や経験値によって異なる感想を持つ。

高校生の時は、ひたすら竜馬がカッコよくて憧れを抱いて、無謀にもこんな風に生きたいなと思っていたような気がする。竜馬に限らず、幕末の志士たちの気風というか気概というか、そういったメンタリティに、当時は圧倒されてしまっていた。

今回は、竜馬は「好きを貫い」た結果、日本そのものを変えてしまうダイナミズムを生んだのではないかと考えた。ここでいう竜馬の好きは「船」。船が好きで好きで仕方がなく、自由に航海し、外国と渡り合っていくために、藩幕体制を変える必要があり、その結果として大政奉還を実現させてしまった。そんな風に読むことができた。

誰しも好きなことをしている時に、一番の集中力とエネルギーを発揮する。だから好きなことを仕事にしている人は幸せだし、周りから見ていても充実感が体からオーラとなって出ているのが分かる。黒船を目撃してからの竜馬が、まさにそんな感じで書かれていて、あぁ、司馬遼太郎さんはそんなことも描きたかったのかなと思った。

2019年11月11日月曜日

真山仁「トリガー」


ハゲタカの真山仁さんの新刊「トリガー」を読んだ。今回のテーマは民間軍事会社。これまでの真山さんの小説の中ではもっとも血のにおいのする作品だった。相変わらずテンポよく飽きさせない構成にサスペンス要素が絡まって、一機読了間違いなしの面白い仕上がりになっている。

主人公は、引退した元内調トップの冴木。彼がまた「鷲津」っぽく、新たなノワール・ヒーローの誕生か?と思わせる。ただ、彼以外のキャラがもう一つ印象に残らなかったのがちと残念。彼の養女、ミステリアスなクール・ビューティー怜は続編がでれば主人公クラスに大きく化けるとは思うのだが。

東京五輪が舞台となっていることもあって、現実の世界とリンクしたかのような社会問題が浮上してくるのはもはや真山さんの専売特許。事実は小説より奇なり。実際はもっとおどろおどろしいのかと考えると、それはそれで怖いなと竦んでしまうような内容でもあった。社会派小説が好きな人には外さない一冊。

追伸。そもそも傭兵って日本ではあまり馴染みがないが、海外では一般的なのかな?そうだとすると、そのうち日本人でも傭兵を職業に希望する人が出てくるんじゃないかと思う。どうやったら傭兵になれるのか分からないけど、日本人傭兵は少ないだろうから、日本語(と英語)を話せる傭兵は重宝されるかも知れない。

2019年11月1日金曜日

東京貧困女子


東京貧困女子を読んだ。読み進めるのが苦しくて、何度も中断しながら読み終えた。これまで読んだ「貧困問題」に関する書籍のなかで、現実のどうしようもなさが一番伝わってくる内容だった。貧困に苦しむ東京で生きる女性たちの、過酷な現実が、彼女たちの自己責任というよりは、むしろ男性優位の社会構造や、現状を改悪する政府の(意図的な)政策によってもたらされていることに、憤り、やるせなさ、無力感、絶望感など、およそあらゆるネガティブな感情を抱いた。

ごく普通の女子大生が、学費や生活費のために当たり前に体を売る社会。真面目に働いても生活保護水準並みしか稼げず、生活が成り立たないシングルマザー。体調不良や介護離職などの理由で一度退職すると最低賃金でしか復職することのできない雇用環境。低賃金で徹底的に使い込み、精神不調を来したら切り捨てる介護業界。これが日本なのかと目を覆いたくなる数々の現実。

どう考えても社会がおかしな方向に向かっているのに、全然歯止めがかかる様子がない。もう日本社会は底が抜けてしまって、そのことにきっと多くの人が気付きながら、自己防衛でいっぱいいっぱいになっているのだと思う。明日は我が身。とても周りに気を配る余裕なんかない。それが現状なんじゃないだろうか。本当に希望のかけらも見えない。でも知らないでいるよりは知った方がよい現実だと思う。多くの人に読んでもらいたい一冊です。

2019年10月17日木曜日

権力と新聞の大問題


先日、映画「すべての権力は嘘をつく」を観て、上映後の望月さんのトークショーを聞き、それ以来、彼女の著作を「新聞記者」「しゃべりつくそう私たちの新フェミニズム」「同調圧力」と続けて読んだ。それぞれ内容が重なる部分があるが、興味深い内容でジャーナリズムについて考えさせられると同時に、日本のジャーナリズムの危機的状況に頭を抱えてしまう。

一番印象に残ったのは、日本の権力による圧力は、中露米のそれと比べるとぬるま湯程度のものであるという指摘。これは、共著者のニューヨークタイムズ記者マーティン・ファクラー氏が語っている。それなのに、日本ではそのぬるま湯程度の圧力に屈してしまう。それが一番危機的な状況ではないかと思ってしまう。

日本は企業社会で、ジャーナリストといえでも企業に所属している限りサラリーマンである。そうすると、会社や上司の意向に逆らってまで取材をすることは、進退にかかわることで、養うものがいる状況になるとどうしようもなくなってしまう。権力はそのことを熟知しているから、会社のトップに甘い汁を吸わせて権力に取り入れ、骨抜きにしてしまう。とてもシンプルで狙いが確実な構造がここにある。

一方で、ITを駆使し、直接市民をスポンサーとして経営を始める、真にインディペンデントなメディアの萌芽があることを紹介して、そのことに期待もしている。確かにそういったメディアは必要だ。またそういったメディアが育っていくことと、民主主義が育っていくことは相互補完的な関係になるだろうとも思う。

2019年10月16日水曜日

書店主フィクリーのものがたり


今日の一冊。紙の本が好きな、そして少し古風なものに愛着を感じる人は、この本はきっと気に入るんじゃないかと思う。大泣きするほど感動はしないけれど、読んだその日一日が、穏やかで、暖かい気持ちになれる木洩れ日のような一冊です。

小さな島で本屋を営む中年男性フィクリーは、数年前に妻を亡くし、それ以来心を閉ざし偏屈気味。ある日、本屋に置き去りにされた幼女マヤを受け入れることで、少しずつ心を開いていく。と、物語の筋はとてもありがち。

でも舞台が本屋だから、本に対するこだわりや、本にまつわる小話が文中にちりばめられ、それが本好きの心をくすぐる。そして、本という共通の趣味を通じて、出会い、わかり合い、繋がり合う、そういった人と人の営みが優しく描かれています。

テクノロジーが発展する現代社会に対し、それを肯定的に受け止めようとすればするほど、逆に疎外感を感じてしまう。そんな矛盾のようなわだかまりを感じてしまう僕のような人間には、2010年代以降(本書は2014年発表)に、本書のような作品がベストセラーになるのはとても救われる思いがする。

2019年7月9日火曜日

極夜行と極夜行前


角幡さんの「極夜行」と「極夜行前」を読んだ。抜群に面白くノンフィクション大賞受賞が納得の作品だった。
非日常体験を、日常的な「あるある」に置き換えて笑いを誘う、よくある探検ノンフィクションパターンと、未知の世界に対する純粋な驚きを真摯に織り交ぜ、読み手を興味を最後まで飽きさせずに離さない。エンタメとしても一級品の作品だと思う。
僕的に考えさせられたのは、両書で触れている角幡さんの人生観というか年齢感。同世代だけあって、なるほどと思うことが大きかった。また「本当の探検」を体験するために、GPSも衛星携帯電話も持たずに「自力」で探検を行うことの意義を説いている。
実際に、極夜の世界において自分がどこにいるのか正確に分からずに大きな困難にぶつかることになるのだが、それが本書において読み手を興奮させ、そして感動させるエネルギーとなっているのは間違いない。
ここまでやり切ってしまうと、次があるのか不安になってしまう。探検記として面白いだけでなく「生き方」についても非常に考えさせられるので、どんな形であれ、角幡さんの次作にとても期待している。

2019年6月13日木曜日

ライフ


小野寺さんの新刊「ライフ」を読んだ。本屋大賞2位だった「ひと」も心温まるすごくいい本だったけど、本作も、読後に同じように温かく優しい気持ちになれた。
一番印象に残ったのが、観に行った隣人の演劇が思いもよらず「分かりやすい」ものった部分。そして「分かりやすい」こともありなんだなと、拍子抜けしながらも肯定的に受け止めているところ。
これは僕にとっては大きな発見だった。僕は「分かりやすい」ことに理由を見つけてしまうと、何か大きな本質を見落としてしまうから、そういうのは避けたいと考えていた。
最近では「ひきこもり」の件もそうだし、ちょっと古くにはコロンバイン州で起きた銃乱射事件なんかもそう。犯人が○○だったから、○○を見ていたから、という風に捉えるのも「分かりやす」くする典型的な例だなと思っていた。
確かに分かりやすいだけでは、正当性はないし、統計をもとに社会学的見地から事実関係を捉えた方が理解が深まると思う(少年犯罪が起きると、少年犯罪が増えたという風な風潮になるが、実際件数は増えていても、全体を占める少年犯罪の割合は減っているなど)。
ただ「分かりやす」さの中に、本当のことが表れている可能性も否定できない。だから、そのことを軽く考えてはいけないんじゃないかという気がしてきた。
結局バランスが大事、みたいなところに落ち着くんだけど「分かりやすい」疑いながらも、そういうこともあるんだよな、くらいの距離を持ち続けることも大切なんだと思う。

2015年11月10日火曜日

坂口恭平『幻年時代』


『独立国家のつくりかた』を読んで以来、その社会に対する考え方に共感してすっかりファンになってしまった。『現実脱出論』『隅田川のエジソン』『徘徊タクシー』『幸福な絶望』と続けて読んだがどれも抜群に面白い。坂口さんの途轍もない才能に怖いくらい凄味を感じてしまう。

本書『幻年時代』は、坂口さんの原点とも言える風景を眺めているかのような錯覚にふと落ち入る。たまたま同年代生まれということもあって、物語の中の生活感が懐かしく感じる。昭和も終わりに近付いた、これから始まる平成の世に、まだ純粋にワクワク感だけ持っていた時代。

物語とは別に本の造りも素敵だった。手触りに少しザラつきのある紙で、時間が経つとほんのり甘い香りを発しながら四隅が均等にきつね色に変わっていく。その紙の変化に合うように、上下左右に均等に充分な余白も用意されている。幻年時代というタイトルに相応しい造りだと思う。作品として大切にしたい一冊。

2015年10月20日火曜日

スターバックス物語

『スターバックス物語 はじめて明かされる個性派集団の挑戦』

モンゴルから帰国し、日常的にスタバに行くようになってから約5年。この5年間の生活はスタバ抜きには考えられない。本当に私自身のサードプレイスとして活用させて頂きました。今更ながら、スタバのことを知りたくて、関連書籍を読み漁っています。

今回読んだのは、日本にスタバが定着するまでの軌跡を、創業に関わったメンバーが紹介する一冊。サザビー創業者の鈴木陸三さん、その兄でスタバ初代CEOの角田雄二さん、そしてスタバ創業者ハワード・シュルツさん。この3大立役者が織り成す舞台裏の熱狂が伝わってきて心を衝き動かされる。とても面白い。

本筋とは違うが印象に残ったのは対話(交渉)する時の「対等」をキーとした姿勢と、対話そのもの大切さ。また「説明責任」という言葉を、①相手が「正しく事実を理解する」、②その説明が「腑に落ちる感覚があり納得できる」、③そして「心から共感する」と三段階に分けて捉えるとしていることは非常に参考になった。

人に感動を与えることのできる企業には感動する物語がある。この法則は崩れない。

2015年10月19日月曜日

ミッション

『ミッション 元スターバックスCEOが教える働く理由』

スタバのドリップコーヒーを飲みながら東京新聞を読むのが毎朝の楽しみ。この快適な環境を提供してくれるスタバを知りたくて、最近はスタバ関連の本を連読しています。

著者は元スタバCEOの岩田さん。本人の人柄がそのまま文章になったような、読み手を大切に思う気持ちが伝わる気持ちの良い本だった。

ミッションを持つことが人生を豊かで面白いものにする。ということを、本人の体験談や、CEOを務めたボディショップやスタバで実際に起こったエピソードをもとに説いている。普通に書いたら「いい話」で終わってしまうのだが「なぜそうなったか」をきちんと理由付けしているので説得力がある。

読後に、ワクワクして元気になってやる気が湧き起こって脳がスパークする。ビジネス本の醍醐味が詰まった自信を持ってお勧めできる一冊です。



メモ: 第5章「自分のミッションを作る7つのヒント」

・働き方ではなく働く目的を考える
・自分・ミッション・会社は三位一体で成長する
・「私」を無くす
・3つの輪は何か考える
・ミッション探し、自分探しの旅はずっと続く
・自分の存在を肯定する
・「自分はまだまだ」の気持ちが成長を加速する


2015年10月15日木曜日

スターバックス


スタバの接客がすごい。どの店舗に行っても9割5分くらい心地よい対応をされる。働いているスタッフも楽しそうにみえる。スタッフ教育がしっかりしているのだろう、と思ったけど、どうやらそれだけではなさそう。『スターバックスのライバルはリッツ・カールトンである。』は、対談形式の本で読みやすく、そしてとても分かりやすくスタバのすごさを説明している。

本書には「おもてなし」「ブランド」「ミッション」など、スタバのすごさを読み解く色々なキーワードが登場し、それらに紐付いたストーリー紹介も充実していて面白く、そして参考になる。個人的には「修身」が一番包括的で大切にしたいキーワードだった。

修身は教養や知識とは違い「どうあるべき(how to be)」かを考え、長い期間をかけ、実践を通じて育てていく「道」のような概念だと感じた。社会や経済が効率性を高める過程で、育てていくことをおろそかにしてしまったものだと思う。元リッツの高野さんも元スタバの岩田さんも、すべての土台に修身があり、その上にこそ行動が根付くと言っている気がする。

第1章「ホスピタリティはいかにして生まれるのか?」は、働くことの心構えについて書かれていて、この章だけでも冊子にして来春の新卒者に配りたいくらいの内容だった。

2015年10月11日日曜日

独立国家のつくり方→気になる人

坂口恭平さん。こんな面白い人を今まで知らなかったなんてとっても損をした気分。図書館で彼の作品を借りられるだけ借りて読み始めているところです。

それで次に読んだのが坂口さんと渡辺京二さんの対談が冒頭に掲載されている『気になる人』。対談と言うより坂口さんに対する渡部さんのインタビューで、150キロの直球で内角を抉るような質問がすごかった。坂口さんも普通に打ち返していたし。50ページにも満たない短い対談だけど、坂口さんの思考に対する理解がとても深まる内容だった。

渡部さんは『気になる人』で坂口さんの他にも何人かインタビューされていて、そのどれもがアットホームな雰囲気があって、まるでその場にいるような心地良さがあった。今まで読んだことのない対談だった気がする。渡部さんと相手の方が「熊本」という共通点で結び付いていたからかも知れない。インタビューする側とされる側の理想の関係の一つとして、この本はありなんじゃないかと思う。

2015年9月28日月曜日

日本に絶望している人のための政治入門

Amazonのレビューで好評と酷評が半々くらい(9/28現在)だったので、当たりハズレにドキドキしながら読み進めました。結果は当たりでした。☆は4つくらい。

最後の「日米同盟と沖縄」と「沖縄県知事選とアメリカとの付き合い方」が、これからの沖縄問題を考える上で参考になった。国際的視点と国内的視点、そして時間軸を移動しながらの論考は、国際政治学者の肩書きに恥じない内容だった。

いずれやってくると予想する「米国の撤退」から、アジアの経済・政治・安保分野における協力と統合を主導するために、沖縄の地政学的利点を生かした「アジアのハブ」化は、本書の中で一番挑戦的な提案に感じる。

自身の立場を自覚し、誤解を恐れず書かれた文章は、納得できなくても好感を持てる。ただ本のタイトルが内容とあまり関連がない気がする。日本に絶望している人がこの本を読んでも、著者のいう「正しく絶望」した後の希望には繋がらないのでは。

2015年3月5日木曜日

SIGHT VOL61 面白いよ!


残念ながら今号から不定期刊行となってしまったSIGHT。でも待った甲斐があっていつもの1.5倍くらい(いつものは偏差値80くらいの濃さ)密度の高い、読み応えのある内容だった。

それにしても発行人の渋谷さんはすごい。ロックに関わる人で一番本気で安倍政権や原子力ムラに代表されるヤバい社会と戦っている気がする。読んでいてその姿勢が伝わってくるし、自分もしっかりしなきゃって気にさせられる。

今回一番刺激を受けたのは高橋若木さんのインタビュー記事。時代に合わせてアップデートされていないリベラルの態度とその言葉が、有害無実になっているといるという指摘はまさにその通りだと思った。それに気付かずに体制批判しているのは、むしろ相手の思うツボに嵌ってるので、気付かなかった自分に何かとても反省した。

古賀茂明さん、白井聡さんの記事も面白く勉強になった。SIGHTはただ批判しているだけの本じゃなくて、読むと理論武装になるのがいい。薄くて軽くて802円。これはもう買うしかないでしょ!

2015年2月26日木曜日

『慟哭の海峡』

太平洋戦争を題材としたノンフィクション『慟哭の海峡』を読みました。今年で戦後70年。終戦当時15歳だった方ももう85歳になる。今の日本を考えると、戦争を語れる人がいなくなってしまった時に、また同じ過ちを繰り返すのではないかと思う。

そうならないためにも、記憶を受け継いで次に繋いでいくことは、戦争を知らない世代の重要な役割だと思う。本書からは、右とか左とかそういった思想は感じられない。記憶を風化させないための努力が伝わってくる。こんな時勢だからこそ、特別に気を引き締めさせられる。

2015年2月17日火曜日

森絵都『クラスメイツ』

森絵都さんの『クラスメイツ』を読みました。学校が舞台の青春小説が好きな人はきっと好きになると思う。

フィクションというにはリアルだし、リアルというには出来すぎてる。その辺のバランスがいいから、時に中一だった頃の自分を重ね合わせてみたり、みなかったり。読みながら今とあの時を行き来できて、それが切な楽しかった。

森絵都さん。久しぶりに読んだけど、相変わらず優しい文章だな。「森絵都」って名前も優しい。エヴァーグリーンなポップミュージックみたいだ。

2015年2月16日月曜日

國分功一郎さんがマイブーム


『東京新聞✖️坂本龍一 脱原発とメディアを考える』の巻末に収録された國分功一郎さんの寄稿にハッとさせられた。わずか2ページの文章なので、上の画像をDLして読んでほしい。

見落としがちな事実をさらっとすくい上げて分かりやすく提示している。『暇と退屈の倫理学』もそうだったがシンプルな問いかけで奥が深い。こういうのが「哲学者」の仕事なのだなと思う。

國分功一郎さんがマイブーム。