2010年10月24日日曜日

モンゴルの環境問題について

モンゴル(ウランバートル=UB)の環境問題を総括してすこし考えてみる。

といってもモンゴルはUBとその他で全く環境が異なる。それは東京と日本の山村の比較よりも異なる次元として捉えなければいけないくらいに違う。共通なのは言語くらいと言ってもいいかもしれない。それ程UB以外を知っているわけではないので憶測なのかも知れないが。

モンゴルの環境問題を考える際に、まずモンゴルも環太平洋の諸島国と同様に加害者の側面よりも被害者の側面が強いことを忘れてはいけないと思う。考えてみれば当然で、300万程度の人口かつ大した産業を持たない国の経済活動がそれ程環境にインパクトを与えるわけがない。ましてはつい最近までは半数以上の国民が遊牧生活をしていた国である(遊牧にも環境負荷はあるが伝統的に持続可能である)。

しかし、それでもここ最近の経済成長によりUBの環境問題の悪化が顕著になってきている。これは(構造的には強い責任はあるが)一概に先進国の経済活動にだけ原因を押し付ける訳にはいかない。主な問題は大気汚染とゴミの不定性処理。(大気汚染は世銀のレポートに詳しい)このまま問題が改善されずにいくとUBは世界で最も住みたくない首都として名前があがることになると思う。

ただでさえ寒く長い冬があるのに、100メートル先が霞む大気汚染や街中にゴミがあふれてしまっては都市アメニティは最悪と言わざるを得なくなる。またアメニティ充実を阻害する要素としての自然環境が乏しいことや、交通量が多く渋滞、騒音のレベルが高いことも挙げられる。ちなみに都市アメニティのレベルはドイツの多くの都市を100として比較すると日本は60、モンゴルは5くらいだと感じている。

勿論これらの問題に対して少数ながらも真剣に考える国民も増え始めている。政府も先進国からの支援を受け入れ、大気汚染やゴミ問題、交通渋滞を改善するためのプロジェクトを進めている(効果があるのか分からないものもある。交通渋滞なんかは道路整備をしてもちょっとはましになるくらいで大して改善されないだろう。東京を見ればそれが分かる。原因は歪んだ経済成長にある。)。一方、最近何かと話題な希土類をはじめとする豊富な資源を持つ国土が各国から注目を集め、環境問題を二の次にする開発計画も同時に進行中である。

この様に、これからのモンゴルの環境問題もご他聞に漏れず開発と環境のジレンマに突入することになると思う。厄介なのは開発における経済的恩恵が一部の特権階級層に吸い取られ、貧困問題をさらに顕在化させる恐れがあることである。そして貧困問題もご他聞に漏れず環境問題を悪化させる。どちらかといえば環境問題が悪化するファクターのほうが大きいのは否めないのが現実だと思う。

ではどこが主導となって環境問題の改善を目指すのか。個人的に一番期待を寄せているが10年20年後の未来世代である。どこの国もどの歴史も大抵そうなのだが(良し悪しは別にして)問題を作り出した世代がそのまま問題を解決する世代になることはまずない。出来ることは問題解決のための種を撒くことくらいしかない。そこで環境と教育という言葉が繋がり、環境教育という言葉が出てくるようになったのだと思う。

モンゴルでも私が赴任した当初は環境教育という言葉に該当するモンゴル語にはなく、どのように表現すればいいか最初少し悩んだ(今ではそれらしき言葉が定着しはじめたようではある)。当然のことながら日本や欧米で実践されているような環境教育やそれを実践できる純国産の組織はあまりない。しかし純国産に限らなければ、先進国の出先機関やボランティアなどの活動は俄かに活気付いてきている。

今後はこういう外国関連の組織を受け皿として留学帰りなどのモンゴル人知識層が関わり、独自の組織を立ち上げ環境問題にアプローチしていくケースが増えるのではないかと考えている(モンゴル滞在中にあったモンゴル人の環境活動家はほぼ全員海外留学組であった)。その中で少しづつ環境教育の手法が根付いていくだろうし、そう期待したい。実際にドイツのGTZなどは環境問題に関心があり、語学力のあるスタッフの採用に積極的で、環境教育でもレベルの高い活動を展開している。

環境と開発、そして貧困。さらには環境問題に対する市民リテラシーの不足の問題あり、独自の青写真はおろかそれを構想するチカラが育っていないのが2010年の現状なのではないかと思う。この様に厳しい見通しではあるが、モンゴル人特有の楽観と言うかいい加減と言うか、日本人にはないタフな性格と自国に対する誇りが血液となって流れている民族なのでどんな困難に際しても折れずにぶつかっていける気はする。

以上が簡単ではあるが活動を通じて感じたモンゴルの環境問題に対する俯瞰的な所見。また機を新たに詳述してみたい気がする。

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