2016年8月28日日曜日

不屈の棋士

大川慎太郎『不屈の棋士』

ソフトがプロ棋士に勝つことが「普通」になった2015年。現役のトップ棋士11人に、ソフト登場による将棋界へのインパクトや棋士の存在価値、ソフトに対する思いなど、かなり直球なインタビューしている。

過去の電脳戦の結果を見て、僕はプロ棋士はもうソフトに勝つことは出来ないだろうと思っている。だからプロ棋士VSソフトという構図には将来性をあまり感じず、それほど観たいコンテンツだと思わない。

僕とって将棋の魅力とは、棋士が将棋という難解なゲームに向かう姿勢であり、羽生さんをはじめ、棋士の語る言葉が、現代社会を自分が知らなかった角度から解釈していて面白いということ。だから棋士の率直な言葉が語られる本書はとても有り難い。特に羽生さん以外の棋士の声は、専門誌以外ではなかなか読めないので嬉しい。

本書で一番印象に残ったのは山崎八段のインタビュー。自らコミュ障であることを自虐的に暴露しながら、だからこそ将棋が無くては生きて行けないと切実に語る。ものすごく人間性を感じる内容で、知性と庶民性のアンバランスに危うさ感じ、それがとても魅力的だ。

それと、ほとんどの棋士が共通して語った内容に、ソフトに頼り過ぎると自分で考える力が衰えるということがある。当たり前過ぎてスルーしてしまいそうだけど、これが今後色々な場面で当てはまる一番深刻な脅威なんじゃないかなと感じる。(職が奪われるのが表面的な脅威だとすると)


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