墓田桂「難民問題」中公新書 2016
先日読んだ「シリア難民」より、論点を包括的にかつ慎重な姿勢で分析していて、難民問題の全体像が掴め、とても参考となる内容だった。
日本は難民受け入れに消極的なのは事実だが、実際の難民申請者の大半が経済的な移民希望者であり、その結果認定者数が少ないなど、大手メディアでは報道されないデータも多い。また、受け入れ難民の国籍が、政治的なリスクを内包することも現実的で説得力を感じた。
一番考えさせられたのは、難民受け入れを、誰もが反対できないような人道的観点からのみ検討することのリスクについて。それは「善意の上限」というキーワードであり、善意だけではこの問題は解決しないし、逆に現在EUが直面しているような危機を招く可能性を適切に懸念している。
勿論、だからと言って突き放した政策をとることが正しい回答ともせず、それぞれの立場が一理あるというジレンマに向き合っている。
難民問題はまだまだ先が見えない。日本がEUのような劇的な変化の当事者となる可能性も当然ある。その前に、論点を整理し備える必要があると感じた。
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