2019年6月13日木曜日

ライフ


小野寺さんの新刊「ライフ」を読んだ。本屋大賞2位だった「ひと」も心温まるすごくいい本だったけど、本作も、読後に同じように温かく優しい気持ちになれた。
一番印象に残ったのが、観に行った隣人の演劇が思いもよらず「分かりやすい」ものった部分。そして「分かりやすい」こともありなんだなと、拍子抜けしながらも肯定的に受け止めているところ。
これは僕にとっては大きな発見だった。僕は「分かりやすい」ことに理由を見つけてしまうと、何か大きな本質を見落としてしまうから、そういうのは避けたいと考えていた。
最近では「ひきこもり」の件もそうだし、ちょっと古くにはコロンバイン州で起きた銃乱射事件なんかもそう。犯人が○○だったから、○○を見ていたから、という風に捉えるのも「分かりやす」くする典型的な例だなと思っていた。
確かに分かりやすいだけでは、正当性はないし、統計をもとに社会学的見地から事実関係を捉えた方が理解が深まると思う(少年犯罪が起きると、少年犯罪が増えたという風な風潮になるが、実際件数は増えていても、全体を占める少年犯罪の割合は減っているなど)。
ただ「分かりやす」さの中に、本当のことが表れている可能性も否定できない。だから、そのことを軽く考えてはいけないんじゃないかという気がしてきた。
結局バランスが大事、みたいなところに落ち着くんだけど「分かりやすい」疑いながらも、そういうこともあるんだよな、くらいの距離を持ち続けることも大切なんだと思う。

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