2018年2月2日金曜日

僕は沖縄を取り戻したい


宮川徹志「僕は沖縄を取り戻したい」


本書は沖縄返還に尽力した外交官千葉一夫の稀有な人物像と、米国高官たちと対等に渡り合ったタフ・ネゴシエーターとしての仕事振りを、数多くの資料や取材をもとに伝えている。現政権の対応を批判する内容ではなく、沖縄返還の舞台裏を、一人の外交官を主役に据えて描いている。

千葉一夫の沖縄返還に懸ける思いは、戦中に米軍通信傍受の任務に就いたことに発している。そこで知った沖縄戦の惨状が「沖縄を取り戻す」思いへと繋がった。返還交渉の担当時代には、4年弱の期間に15度も沖縄を訪問し、言葉や民謡なども覚えて現地の人々と交流を深めた。

外交という国と国との交渉でありながら、誰よりも沖縄の立場を考え続け、だからこその苦悩や困難も抱えることとなった。結果として、100%沖縄の要望に応える内容の返還とはならなかった。基地問題や特別地位協定は今も大きな課題として続いている。それほど、米国にとっての東アジアの安定は、日本が想像する以上に根深い不安なのだと思う。


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