朝吹真理子さんの新刊「TIMELESS」を読んだ。直線にするとすごく短い話だけど、回り道をしていたらいつの間にか時間が過ぎていた。そんな感じを受けた小説だった。7~8年前に読んだのでうろ覚えだが、芥川賞受賞作「きことわ」も同じような感じのする小説だったと思う。
文章だけでなく、物理的な行間や、紙質、紙色、本を構成するすべての要素から、どこか無機的な冷たさが伝わってきて、でもそれを美しいと感じる。物語を読んでいるというより、アートに触れているといった気持になる。本を触媒として、自分のなかにも記憶に結び付いた情景が浮かび上がってきた。
僕の好きなThe Durutti Columnの曲が流れる場面があって、そこに強い親近感を覚えた。Antony and the Johnsonsもそう。どちらもこの本と一緒で、美しくて、少し哀しくなる。決して「面白い」と言える内容ではないのだけど、僕はこういう物語がないと人生が生きにくくて困ると感じてしまう。
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