2019年10月16日水曜日

書店主フィクリーのものがたり


今日の一冊。紙の本が好きな、そして少し古風なものに愛着を感じる人は、この本はきっと気に入るんじゃないかと思う。大泣きするほど感動はしないけれど、読んだその日一日が、穏やかで、暖かい気持ちになれる木洩れ日のような一冊です。

小さな島で本屋を営む中年男性フィクリーは、数年前に妻を亡くし、それ以来心を閉ざし偏屈気味。ある日、本屋に置き去りにされた幼女マヤを受け入れることで、少しずつ心を開いていく。と、物語の筋はとてもありがち。

でも舞台が本屋だから、本に対するこだわりや、本にまつわる小話が文中にちりばめられ、それが本好きの心をくすぐる。そして、本という共通の趣味を通じて、出会い、わかり合い、繋がり合う、そういった人と人の営みが優しく描かれています。

テクノロジーが発展する現代社会に対し、それを肯定的に受け止めようとすればするほど、逆に疎外感を感じてしまう。そんな矛盾のようなわだかまりを感じてしまう僕のような人間には、2010年代以降(本書は2014年発表)に、本書のような作品がベストセラーになるのはとても救われる思いがする。

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