2019年11月28日木曜日

ガリーボーイ


映画「ガリーボーイ」を観てきた。今年、劇場で観た作品は80本目くらい。その中で、一番心に突き刺さる映画だった。鑑賞後に小さな熱が燻り続けて、じっとしていられなくなるような、そんな気分になってしまった。

本作はインド映画で、実話をもとにした作品。インド映画によくある歌と踊りの力業押し切って勝ってしまうような内容ではなく、とても繊細かつ丁寧に作られ、そして役者の力量が存分に反映された正統派な作品だったと思う。

「格差」が固定化された社会で、底辺層にくらす若者が、ヒップホップを武器にのし上がるサクセスストーリー。夢と目の前の現実、自分の存在価値に対する不安、理解を得られない家族に対する葛藤など、誰もが通過する懊悩に、自分を重ね合わせて苦しくなる。

印象に残ったのは、主人公が使用人として富裕層に仕え、その家の娘をクラブまで迎えに行く場面。クラブからでてきた娘は泣きながら車に乗り込み、主人公は黙って車を運転する。帰路、バックミラーで娘が泣いているのを見ながらも、結局一言も声をかけない。貧富の格差による断絶がそこにある。

ロックではなくヒップホップ。実話だからそこは変えようがないのだけど、もしこれがロックだったら全く違った作品になっていた。溢れる激情を詩にして社会に対峙するのは共通だが、ヒップホップにはより生身の人間のリアルがある。ヒップホップの魅力に打ちのめされる映画でもあった。

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