2019年11月2日土曜日

JOKER

映画「JOKER」を観てきた。映画としては予想以下でも以上でもない作品だったけど、この希望のかけらもない作品が「今」の時代に高評価で受け入れられていることについて考えさせられる内容だった。1. 新自由主義社会の闇市場原理が行きつくところまで行き、効率至上主義のもとで福祉が切り捨てられ、経済的格差が固定化した現代社会を象徴するノワール・ヒーロー。現代社会がそのまま舞台となったかのような世界観なので、主人公が悪に染まっていく心理状態が、視聴者に否定よりも共感をもって受け入れられたのではないかと思う。そのこと自体が、現代社会の破綻を示している気がする。2. 「デモ」が起こりうる社会とそうでない日本本作品の終盤、貧困層の人々のデモが過激化し、派手に暴動を繰り広げられるシーンが描かれていた。最近観た韓国映画「1987 ある闘いの真実」(実話ベース作品)でも、独裁政権打倒を目指す市民のデモが実際の映像をもとにリアルに描かれていた。日本では、このように市民と権力側が衝突をするデモはもうほとんど起こりえない。でも、世界に目を向けると、最近では香港もそうだし、普通に起こりうる。このことは「民主主義」に対する意識の差なのではないかと思う。映画を観ながらそんなことを考えた。あと劇中の音楽が効果的で、人間が心理的に「切れ」そうで切れない絶妙な情感をとてもよく表現していたように思う。トレント・レズナーがかかわった映画「ソーシャル・ネットワーク」以来、深く印象に残った。

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