東京新聞 2017.03.11
3.11から6年。思うことが色々ありすぎてまとまらない。だからと言うわけではないのだけど、たまたま「義父」の存在についての記事を見つけたので、僕の義父についても書いてみる。
僕の義父はどういう人かというと、A型の典型を地でいく超几帳面な方だ。少し前に定年退職されたが、高卒で入社した会社の総務部で働き通し、まさに総務の鏡のような人だった。
几帳面さには色々な逸話があり、その一つでよく持ち出すのが旅行の日程管理。国内、海外問わず、旅行の際には分刻みの工程表を作成する。それも4〜5回はアップデートをし、その都度工程表にはVer⚪︎と記載される。
そして実際の旅行の際には、計画通り行動することが最重要視される。1日の終わりには工程表がレビューされ、注釈がつけられる徹底ぶりだ。もちろん、注釈箇所には定規でラインが引かれ、とても分かりやすい仕上がりとなり、何時でも取り出せるようきちんとファイリングされる。
ファイリングと言えば先日面白いネタが出てきた。義父は大阪万博の入場券をまるで昨日購入しました言わんばかりの状態できちんと保管していたのである。たまたま万博が話題になった時、そう言えばという感じで、探す手間に1分もかからず入場券が登場した。すごい管理能力だ。
また義父は100を超える資格を取得していたり、社会的な問題に対しても意識が高い。近隣の公園に自然が少ないから、自治体に陳情して木を植えさせたりもした。自身も自然に関する知見に富んでいて、家庭菜園で採れた野菜を使って様々な料理を振舞ってくれる。
僕はそんな義父を本当に尊敬していて、身近で尊敬できる一番の人だと思っている。僕が気を遣いすぎてしまって中々フランクに話しかけることができないが、いまはその距離感でいいと思っている。
3.11を経て、僕にとって日本社会はとても息苦しいものになってしまった。直接の被災者でもないのに大袈裟かも知れないが、生きる指針がよく分からなくなってしまった。そんな時、義父の生き方というのが実直で誠実で、教えられるものの多さにハッとさせられる。
一年に一度、整理のつかない気持ちに向き合う。僕にとっての3月11日はそういう日です。